表面加工技術の豆知識

Vol.1 プラスチック表面加工技術 基礎編(その1)

こちらの「表面加工技術の豆知識」は、開成工業の技術者による特設コーナーです。プラスチックフィルムの基礎中の基礎から、かなり掘り下げた専門的な技術情報まで幅広くお届けします。

初回は、プラスチックフィルムにおける表面加工技術について、基礎編(その1)をお送りしたいと思います。

まず、表面加工とはいったい何でしょう?言葉の通り、表面に加工を施すことなのですが、例えば日本では古くから版画で作成した印刷物の上にニスを塗るなどして、作品の保護やツヤだしなどを行っていたそうです。今でも、紙への表面加工は多く使われておりますが、開成工業ではプラスチックフィルムの表面加工を行っておりますので、今回はプラスチックについて下記のお話しをさせて頂こうと思います。

  1. 表面加工の役割
  2. 表面加工方法のタイプ
  3. 表面加工方法のプロセス(インライン/オフライン処理)
  4. タイプ別処理層の厚みの比較

1. 表面加工の役割

初めに、大きく分けて2つのプラスチックフィルム表面加工の役割を紹介します。機能性と意匠性です。

機能として代表的なものは、

  • インキ、粘着剤、ハードコート剤等とのくっつきを良くするための「密着力向上機能」
  • 逆に素材を重ねた際に、ペッタリと貼りつく事を防止するための「ブロッキング防止機能」
  • ブロッキング防止と同様に、接触部分を減らすことで可能となる「摩擦軽減機能」
  • 版画と同じ原理で、フィルム表面の柄を別の素材に写す「転写箔機能」
  • 抗菌性のある物質を付与することで実現する「抗菌機能」
  • 昔から多く使われてきた、素材の表面をキズから守る「ハードコート(保護機能)」

など、家電・生活雑貨・車・インテリア・工業用途・建材など幅広い分野で利用されています。

意匠として良く使われるのは、

  • 落ち着いた雰囲気のマットな質感をだす
  • プラスチックなのに、ヘアラインや蒸着で金属の様な質感をだす
  • キラキラ、ピカピカ、つやつや、しっとりの様な質感をだす
  • デコボコ、ザラザラの様な肌触りをだす

など、表面加工技術を使うことで、同じプラスチックでも色々なデザインが可能となります。

2.  表面加工方法のタイプ

さて、ここからはプラスチックフィルムにおける表面加工方法の種類についてご紹介します。大きく分けて主に7種類あります。

▼表面加工のタイプ

 放電処理

①コロナ放電処理
②グロー放電(プラズマ)処理

 プラズマを発生させる方法によって、コロナ放電処理とグロー放電処理に分けられます。親水性(濡れ張力)向上となり、印刷やコーティングに適したフィルムとなります。

また、通常は大気圧下での処理ですが、窒素等の特定のガス下でコロナ処理をする場合もあります。

スパッタリング、真空蒸着 金属化処理の一種で、CD/DVDの記憶面や、半導体・電子部品用に使用されています。一般的に、真空蒸着よりもスパッタリングの密着性の方が高いといわれています。
火炎処理 フレーム処理とも呼ばれており、フィルムの表面に炎を当てることにより酸化させる方法。印刷に適したフィルムとなります。
電子線、放射線処理 耐熱や耐水性の付与を目的とした処理方法です。硬度も高くなり、耐衝撃性にも優れています。
物理的粗面化処理 開成工業が主に手掛けている表面加工方法の種類です。サンドマットやヘアラインなどがあります。
表面塗布法

①コーティング法
②共押出およびラミネート法                                                                              

表面加工タイプの中でも、最もポピュラーな方法です。基材となるフィルムの上に、別の素材を塗ったり貼ったりします。デザイン性の付与の他にも、印刷物の色落ちやキズ防止等の目的で施されています。
 その他(ブレンド、グラフト等)  添加材等を混ぜ合わせる方法で、帯電防止の目的などで利用されています。

3.   表面加工方法のプロセス(インライン/オフライン処理)

さらに、上記のタイプは2種類の加工プロセスに分けることができます。インライン処理とオフライン処理です。

インライン処理

製膜工程でフィルム自体を製造する際に、一緒に処理を施す方法です。製造機械に一回通すだけで処理が可能ですが、溶剤や処理タイプ、厚みに制限があります。表面加工のタイプだと、コロナ放電処理、コーティング法、共押出がインライン処理にて可能です。

オフライン処理

一度製造したフィルムに、後から処理を施す二次加工のことです。製膜工程とは別に処理用の機械に通すため工数はかかりますが、溶剤や処理タイプ、厚み等、比較的自由に加工が出来ます。開成工業でのサンドマットやヘアライン加工も、オフライン処理(二次加工)です。

4.   タイプ別処理層の厚みの比較

ここまで、表面加工のタイプ別に処理方法や用途を紹介してきました。最後に、タイプ別に処理層の深さを比較してみたいと思います。処理層の厚みによって、可能な素材の厚さや、製品の設計にご利用頂ければと思います。一般的な指標にはなりますが、皆さんの参考になれば幸いです。

今回はこの辺で失礼します。次回は、プラスチックフィルムのタイプについてお話しできれば、と思います。お楽しみに!