表面加工技術の豆知識

Vol.2 プラスチック表面加工技術 基礎編(その2)

こちらの「表面加工技術の豆知識」は、開成工業の技術者による特設コーナーです。プラスチックフィルムの基礎中の基礎から、かなり掘り下げた専門的な技術情報まで幅広くお届けします。

前回は、プラスチックフィルムにおける表面加工技術について、基礎編(その1)として、表面加工の役割、加工方法のタイプ、プロセス、処理層の厚み等をお伝えしました。今回は、基礎編第二弾として、プラスチックフィルムのタイプのお話をさせて頂こうと思います。

 

プラスチックは、様々な形で存在しています。例えばペットボトルやポリバケツの様な容器であったり、衣類用の繊維であったり、当社が主に取り扱っている様なフィルム状であったりします。
また、プラスチックには色々なタイプがあります。フィルム用に適したタイプとしては、ポスターのベースやコンデンサー・電子基板といった電子材料に使用されるPET(ポリエチレンテレフタレート)や、レジ袋やサランラップに適したPE(ポリエチレン)があります。

最適なプラスチックを選択する際は、各タイプの特徴を知る必要があります。代表的な特徴としては、高温でも変形しないもの、柔らかいもの、薬品に触れても溶けないもの、着色しやすいもの、透明なもの、隠ぺい性の高いもの、割れにくいもの、軽いもの、安価なもの、リサイクルしやすいもの、様々な用途に適し汎用性の高いものなどがあります。こういった各プラスチックの性質を理解したうえで素材(樹脂)が選ばれ、付加価値を付けた機能性フィルムとして二次加工がされているんですね。

 

今回は、多くのプラスチック製品の中でも、当社が主に二次加工基材として取り扱っている各種プラスチックフィルムで出番の多いものを下記に分類して紹介したいと思います。

加熱すると溶融し、冷却すると元の固体に戻ることから、熱を加えて成型を行います。再加熱すると再び溶け始めます。この特徴から、リサイクル可能とされるプラスチックは熱可塑性であるといえます。実際にリサイクルされるかどうかは、各自治体や事業社によって異なりますが、再利用コストやリサイクル品の質等を考慮し行われています。

熱可塑性プラスチックは、各プラスチックの特性により汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチックに分けられます。さらに、冷却した際の分子間の結合力や立体構造の状態によって、結晶性・非晶性プラスチックに分類されます。 

A) 汎用プラスチック

価格が安く加工もしやすいため、身近なプラスチック製品では多く使用されています。基本的な耐熱温度は100℃未満です。

 ▼熱可塑性プラスチック>汎用プラスチック

  主な用途  特徴
耐熱性 耐衝撃性 耐候性 耐薬品性 光学特性 価格 軽さ
ポリエチレン(PE)・・・ポリプロピレンと同じくオレフィン系のプラスチックです。非常に柔らかく、成形がしやすいです。国内で最も生産量の多いプラスチックの一つです。     
  ラップ、レジ袋等の包装材料(フィルム以外ではシャンプー容器、ポリバケツ、灯油カンなど)      
ポリプロピレン(PP/OPP)・・・ポリエチレンと並んで国内生産量の多い、オレフィン系のプラスチックです。PPを二軸延伸したフィルムがOPPと呼ばれ、フィルム業界ではOPPが一般的に使用されています。
  コンデンサー、包装材など(フィルム以外では、食品用タッパー、自動車・家電部品、トレイ、コンテナ、ペットボトルのキャップなど)         乳白色
ポリエチレンテレフタレート(PET)・・・ポリエステル系プラスチックで、汎用性が高く性能バランスが良いので、フィルムへの加工としては幅広く使用されています。ちなみに、衣類素材のポリエステルは、PETのことです。
  光学用・工業用フィルム、食品用包装フィルム(フィルム以外では、ペットボトルなど)         透明
ポリエチレンナフタレート(PEN)・・・PETと同じくポリエステル系であるため、特性も似ており、近年注目されているプラスチックです。
  絶縁用、磁気テープなど(フィルム以外では、学校給食・病院食用の食器など)          

塩化ビニル樹脂(PVC)・・・比重が高い為、水に沈みます。硬質で、難燃、電気絶縁等にも優れてます。可塑剤を加えると軟質化し、耐スクラッチ性として使用されます。

  OA機器・電機絶縁部材、クリーンルームの間仕切り、ビニールハウス(フィルム以外では、水道管、ホース、住宅用資材など)           透明
ポリスチレン(PS/OPS)フィルム・・・馴染み深い発泡スチロールは、ポリスチレンに気泡を含ませたプラスチックです。透明性、光沢性、透過性等に優れています。
  PETボトルのラベル、テープ、封筒窓、ラミネート、お刺身・お弁当容器の蓋(フィルム以外では、食品容器、魚箱、コンピューターやTV等のOA品、CDケースなど)           透明
アクリル(AC)・・・透明で光沢がありガラスに近い特性があります。また、アクリル、ブタジエン、スチレンを重合させたプラスチックをABSと呼び、様々な分野で使用されています。
  導光板等の光学用途、ディスプレイ保護カバー、建材gなど(フィルム以外では、透明板、看板、自動車のウィンカー、コンタクトレンズ、水槽など)             透明

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B) エンプラ(エンジニアリングプラスチック)

汎用プラスチックに比べ、耐熱温度や強度、曲げ弾性率が高いタイプを指します。更に、汎用エンプラとスーパーエンプラに分類されます。

① 汎用エンプラ
耐熱温度が100℃以上のプラスチックです。汎用プラスチックと同様に結晶性、非晶性と分類されます。

 ▼熱可塑性プラスチック>エンプラ>汎用エンプラ

主な用途 特徴















ポリカーボネート(PC)・・・非晶性でプラスチックの中でも非常に透明性・耐衝撃性に優れ、分子量が多い程強度があります。
  導光板等の光学用途、自動車メーターパネル、ヘルメットシールド、CDディスク(フィルム以外では、防音板など)          

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② スーパーエンプラ
汎用エンプラよりも更に耐熱温度が高く、通常は150℃以上のプラスチックを指します。さらに結晶性・非晶性と分けることができます。

 ▼熱可塑性プラスチック>エンプラ>スーパーエンプラ

主な用途

 特徴
















ポリフェニレンサルファイド(PPS)・・・難熱性、電気特性にも優れており、電子部品等に多く使われています。ほとんどの有機溶剤には溶けません。PPSのバランスの良い優れた特性から、需要も増え続け、近年ポテンシャルの高い耐熱樹脂として注目されています。
  半導体やコンデンサー、フレキシブルプリント基板、モーター・トランス絶縁材料、工業用粘着テープなど            
フッ素樹脂(PTFE)・・・フライパン加工で知られるテフロンは、フッ素樹脂から出来ています。プラスチックフィルムの中でも最も濡れ張力が低い素材で、液体をよくはじくことが特徴です。他にも、電気特性、耐熱、耐候、耐熱性等に優れています。
  太陽電池の部材、フィルター、絶縁材料、粘着テープなど        



ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・・・耐熱、耐衝撃、耐薬品、耐放射線性等に優れています。RoHS指令にも対応しているため、環境にやさしい樹脂としても使用が可能です。
  航空宇宙フィルム、フレキシブルフィルムヒーター、高性能ガスケット、電子部品の基板用絶縁材料など        

ポリエーテルサルフォン(PES)・・・耐熱、耐衝撃、耐クリープ性等に優れています。
  回路基板、耐熱性絶縁フィルム、データ用磁気テープ等の工業用材料           透明
アラミド・・・アロマチックアミドの略で芳香族ポリアミドのことです。一般的には、ケブラー®(デュポン製)は繊維として多く加工され、ミクトロン®(東レ製)はフィルム加工に適しています。高剛性や耐熱性、引張強度が非常に高く、誘電性が低いため、繊維では消防服等に使用されるほどです。
  回路基板、耐熱性絶縁フィルム、データ用磁気テープ等の工業用材料        

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2. 熱硬化性プラスチック

加熱すると固まるタイプのプラスチックです。一度固まったら、再加熱しても溶けることはないため、特に耐熱性が求められる製品に使用されています。

主な用途 特徴















ポリイミド(PI)・・・耐熱だけでなく、耐寒性、難燃性、絶縁性にも優れています。融点がない為溶融せず、自己消化力を備えています。東レ製のカプトン®が有名です。
  絶縁基材、太陽電池、電子機器、宇宙産業部品など

 

     




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3. その他

熱可塑性や熱硬化性プラスチックとしては分類されることのないプラスチックです。

主な用途 特徴















トリアセテート(TAC)・・・合成素材として半人工的に開発されたプラスチックです。昔から銀塩写真用フィルムや映画用フィルムに使用されてきました。
  液晶ディスプレイ等の光学用途など              

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こちらのコラム記事は、一部「プラスチックフィルムレジン材料総覧2012」、
「プラスチック容器包装リサイクル推進協議会」等の資料を元に作成しています。

今回はこの辺で失礼します。次回をお楽しみに!

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